ウェーブロックホールディングスを支えるTEAM Wavelock。
仕事と向き合い、人と技術・素材の可能性を探求しています。
2020年から、未来を描くための社員インタビュー。

vol.3 新型コロナウイルスへの緊急対応 「ミラクルファイト」誕生秘話

2020年6月

株式会社ウェーブロック・アドバンスト・テクノロジー 名古屋工場 M.I
株式会社ウェーブロック・アドバンスト・テクノロジー D-tec  T.M
株式会社ウェーブロック・アドバンスト・テクノロジー 生産1部 K.Y

新型コロナウイルス・COVID-19の流行により、多くの人々が、生活の変化や様々な困難に直面している。この緊急事態において、私たちにできることは何か。チームウェーブロックが取り組んだのは、自社の技術を活かした、新しい製品を作り出すことだった。

2020年4月23日、株式会社ウェーブロック・アドバンスト・テクノロジーは高透明のアクリル・ポリカーボネート複合材を使用した、飛沫防止フェイスガード「スーパーテクミラーミラクルファイト」を発売。さらに、4月27日には、マスクインナー「ミラクルファイトマスクインナーw(ダブリュー)」、5月12日には「ミラクルファイト日本の匠・高機能マスク」を発売した。

今回、フェイスガード「スーパーテクミラーミラクルファイト」の製造に携わる3名にオンライン・インタビューを行った。

製造全般を担う名古屋工場M.Iさん。営業を任されたD-tec T.Mさん。そして物流管理を担当する古河工場 生産1部 K.Yさん。発売に向けて駆け抜けた日々、製品へのこだわり、お客様の反響についてお話しを伺った。

自社の素材で、高品質のフェイスガードを作る
決起の夜から19日間で発売へ

−    フェイスガード「スーパーテクミラーミラクルファイト」を製造することになった、経緯を教えてください。

T.M 緊急事態宣言が出るより少し前のことでした。弊社代表の島田と、サテライトオフィスの立ち上げ作業をしているときに「医療機関でフェイスガードが不足しているようだ」という話をしていました。我々は、透明なプラスチックのシートを作っているメーカーなので、その素材を使ってフェイスガードを作れないだろうかと話していました。具体化したのは新年度を迎え、全社会議を行った4月4日の夜です。いま流行りの、オンライン飲み会を数名の社員でしていたとき、フェイスガードを作ろうという話が出ました。その時に参加していた、名古屋工場のM.Iさんに製造の話が振られた、そういうきっかけでした。

M.I  弊社は、岩手県の一関市にプラスチックのシートを製造する工場があります。ちょうど私のいる名古屋工場で、トライアル用のシートを預かっていたんです。その頃、世の中にマスクがなくなってしまい、「自分たちで作るしかないか?このシートを利用して作れないか?」という話をしていた。オンライン飲み会でこの話題になり、すぐに試作品を作ることにしました。
 

−    皆さんが必要性を感じていて、フェイスガード製造のプランが生まれたのですね。

M.I  みんなで話したのが、4月4日土曜日の夜。それから、4月6日の月曜日には試作品1号が完成していました。

 

−    フェイスガードの設計は、M.Iさんが考えたのでしょうか?

T.M  そうです。M.Iさんをはじめとした名古屋工場のアイデアです。

 

−    試作品は、どのくらい作られたのですか?

M.I 皆さんにお見せしたのは4回です。その過程で作った試作品は30数種類。角度や材料を検討して、少しずつ変わっていきました。

 

−    シールドとバンド、全てを製造しているのですか?

T.M 一部は外部発注をしています。名古屋工場はもともと、車の部品、ドアのハンドルやエンブレムを作っているので、加工するアイデアとノウハウ、リソースをもっていた。岩手県の一関工場では透明プラスチックのシートを作る技術があった。バンドの部分は、加工する取引先を探してきました。それらを組み合わせて、短期間でフェイスガードを作りました。

 

−    緊急事態宣言のもと、オンライン会議や遠隔での作業は大変でしたか?

M.I 正直、それはありました。誰も試作品を手に取らないまま進行して、サイズや手触り、動かした感触を、オンラインの画面の中でしか説明できない状態でしたから。最後まで不安でしたが、今やっとお客様の手元に届いて、「よかった」という反応をいただいて、ようやく安心しています。

 

−    製造を全般的に任せるということ、皆さんは、M.Iさんチームを信頼していたのですね。

T.M  もちろん、信頼していました。元々、普段の仕事でもM.Iさんにアドバイスをもらっていましたから、製品は間違いないと思っていました。

最大の特徴は、耐衝撃性・高透明の素材と、
シールドが上下に動き、耳に負担をかけない形。

−    シールドに使用している、「アクリル・ポリカーボネート複合材」の特徴、採用した理由を教えてください。

T.M 弊社は、この透明なアクリル・ポリカーボネート複合材というプラスチックのシートを作っているメーカーです。アクリルは、擦り傷などの傷に強く、ポリカーボネートは衝撃に強い。これら2種類の素材を1枚のシートに2層にした、極めて特徴的な複合材です。強度があり透明度も非常に高いため、ガラスの代替品として、スマートフォンの画面や自動車の車載のカーナビゲーションの前面に採用されています。こうしたアプリケーションに使われる資材は、お客様からの品質の要求が非常に高いんですね。自社で作っていること、良い素材で高品質であるということが、シールド部分に採用した理由です。

 

−    形や機能面で、特にこだわった部分は?

M.I  スーパーテクミラーミラクルファイトは、装着したまま、シールド部分を上げ下げすることができます。そして、自由角度で止められる。これが一番のこだわりです。既存のフェイスガードはシールドが固定されていて、角度を変えられないものが多いんです。その形状だと、使用する人がちょっと顔を触りたい時に、着脱することになります。汚染防止のためにも、それをさせたくなかった。顔の大きさにも個人差があり、メガネをつけている人もいる、多くの人が快適な角度に止められるようにしました。

 

−    バンドとシールドを固定するスナップボタンによって、自由な角度で止められるのですか?

M.I そうです。シールドが自重で落ちない硬さとバランスを出すのに苦労しました。実は、量産開始の2日前に完成したんです。この時ほど嬉しかったことはないです。

T.M 医療従事者以外にも、フェイスガードの需要はあります。実際に、接客をする時に使いたいというお客様もいます。接客は喋るから喉も渇く。シールドの角度を上げることで、取り付けたまま、ドリンクも飲める。使い勝手は良いと思います。

M.I ちなみに、このフェイスガードは、装着したままでマスク交換もできるんです。バンドが耳にかかっていないんですよ。

 

−    確かに、固定するバンドは、眉の上から後頭部にかけて止まる形ですね。

M.I 今、T.Mさんが医療従事者向けだけではないと仰いましたが、そこは私にとっても大きなテーマでした。できるだけ多くの方に使っていただきたかった。例えば、耳が不自由で補聴器をつけている方、メガネを掛けている方は、耳にさらに何かをかけると大変な負担になります。だから耳をフリーにしておきたかった。結果として、マスクを付け替えられる仕様になったんです。

新たな仕事への「挑戦」を 全員が間違いなく遂行する。

愛知県名古屋工場では製造に向けた試行錯誤が続き、岩手県一関工場ではシートの製造、埼玉県川口市のサテライトオフィスでは営業部門の対応が進む。東京では一般販売に向けたECサイトの立ち上げ、茨城県古河工場では出荷体制の整備が、同時進行で行われた。

 

−    作業を進めながら、どんな気持ちでいましたか?

T.M  我々が世の中に足りないものを提供する。自分たちの素材と技術で製品を作り、いち早く困っている方に届けたいという気持ちは当然ありました。実は、4月4日の全社会議で社長が言った今期のテーマが「チャレンジ」、「倍速で取り組む」でした。それを4月早々から実践することになった。我々はこれまで、企業に向けた営業活動をしてきて、そのノウハウはありますが、一般のカスタマーへの営業は新たなチャレンジでした。もちろん、オンライン会議で遠隔でプロジェクトを進めることも初めてのチャレンジです。古河工場で出荷を担当するK.Yさんチームも、普段は個人宅への配送業務を行なっていないので、システムを導入することから始めた。それぞれの現場で、ものすごい負担だったと思います。それらを間違いなく遂行する。大変ではありました。

 

−    各地のセクションで、初めてのことに挑戦されたのですね。

K.Y  私のいる茨城県の古河工場では、東京のECサイト運営チームと連携しながら製品の出荷を担当しています。実際に、一般のお客様に商品を届けるということが初めてでしたから、古河工場としても大変良い経験になりました。 何しろ短いスケジュールでしたので、不安はありましたが、大きなミスやトラブルもなく出荷できています。そして、直にお客様の声が聞けることは、ものづくりをしている立場として今回とても嬉しかったですね。

 

−    4月23日に発売が始まり、お客様からどんな反響がありましたか?

T.M 実際に、フェイスガードを使用された携帯電話ショップのお客様からは、非常に良いというお声をいただきました。我々の商品で「守られている」という安心感を感じていただけたようです。また、地方自治体の方からも、使いやすいという評価をいただいています。ダイレクトにお客様の声が聞こえるので励みになりますし、誰かの役に立っていると感じられる。反響は、チーム全体に共有しています。また、勉強になったこともあります。シールドに保護フィルムを貼って出荷しているのですが、お客様には剥がして使う物だとわからないこともあったようで、ご案内方法を検討したりもしました。

 

−    保護フィルムは、傷を防ぐために貼っているのですか?

M.I そうです。シールドは、ガラスの代替品として使われるくらい高透明なので、お客様の手元に届くまでは傷ひとつ付けたくないというのが、我々作り手の気持ちです。

 

−    そのほかに、お問い合わせが多い内容はありますか?

T.M  特に医療機関の方は、繰り返し使えるのかを気にされています。医療機関では衛生上の観点から、フェイスガードを単回使用しているのですが、医療汚染廃棄物が増えているという課題もあるようです。使用状況にもよりますが、弊社のフェイスガードは、複数回の使用が可能です。シールドを取り外して、中性洗剤で拭き取ることで清潔に使うことができ、アルコール消毒にも対応しています。

ものづくりで社会を支える。
その経験がウェーブロックのDNAになる。

−    このプロジェクトを経験されて、改めて自社の製品やサービスについて気付いたこと。今後に活かしていきたいことはありますか?

M.I 弊社、ウェーブロックの始まりは「組み合わせる技術」にあります。我々は、ある素材と素材を組み合わせて、新しい価値を産むということを今でもやっています。この考えが連綿と続いて、今回も、我々の持つ素材と技術、他社の縫製品を組み合わせることで新しい製品を生んだ。ウェーブロックのDNAとして、これからも継承していきたいです。何より、それが自分たちに染み付いていると強く感じました。

K.Y 今回、私は出荷部門を担当しましたが、我々の古河工場でも生産しているミラクルファイトシリーズの製品があります。短期間で生産体制と出荷体制を構築できたことが、とても良い経験でした。今後に繋げていけると思います。

T.M 先ほど、一般のお客様に向けた営業への挑戦について触れましたが、これまではエンドユーザーの気持ち、使い勝手が、見えていない部分があったと思います。今後は、我々がメインで作る工業製品用の資材などについても、ユーザーの目線を持って、ものづくりをしていかなければいけないと感じました。企業のお客様に対しては、コストや性能という話題になりがちですが、ユーザーのことを考えたご提案をしていきたいです。

 

−    最後に、今回のお仕事について、ご家族の反応などあれば聞かせてください。

M.I 私は、早い段階で家族にフェイスガード製造の話をしていて、妻の意見も参考にしました。妻は、「あなたが歳をとった時に孫を呼んで、爺ちゃんは昔、ミラクルファイトを作ったんだ!と、絶対言うわよ」と言って、とにかく応援してくれました。自分でも、2週間で製品が作れるのかという気持ちもありましたが、きっと何年か経ったときに、本当に自分の、ものづくりの軌跡になるんじゃないかと思っています。

T.M  私には小学校2年生の息子がいるのですが、普段、自分の仕事は子供にはあまり理解してもらえないんですね。海外出張も多いので、自分の親父が何をしているか、わからなかったと思います。今回、私がフェイスガードを作っていることを息子が知って、そのことを学童保育の先生に嬉しそうに話したそうなんです。先生からも、私の仕事を応援しますとメッセージをもらいました。これは、すごく考えることがありました。この製品で、息子に親父の仕事をわかりやすく伝えることができた、そして、息子も誇らしく感じてくれていた。私にとって、非常に嬉しいエピソードでした。

 

 

ここに記録しておきたい。2020年の春、世界中が混乱し、先行きのわからない状況を誰しもが体験した。その渦中で「ミラクルファイトシリーズ」は誕生し、ひとり一人の仕事が、僅かでも、社会を支えることができることを証明した。新型コロナウイルスが及ぼす影響には、これからも臨機応変に対応していく必要があるだろう。私たちは、知恵を出し合い、「組み合わせる技術」を活用して、ものづくりで社会に貢献していく。

 

フェイスガード「スーパーテクミラ―ミラクルファイトTM」

頭に装着し、目・鼻・口を守り、飛沫を効果的にシャットアウトすることが 出来るフェイスガードです。シールドは装着したまま跳ね上げが可能なため、作業や業務を行いながらの使用に適しています。製品の詳しい情報は、公式オンラインストアをご覧ください。

https://wavelock-at-shop.net/